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やぎ様リクエスト
圭志と京介の遊園地or動物園デート





「何か俺達場違いじゃねぇ?」

ゲートをくぐりながら圭志は隣を歩く京介にそう言った。

「んなもん気にすんな。それにお前が行きてぇって言ったんだぜ?」

「それはそうだけど…」

圭志はゲートをくぐってすぐ右を走るジェットコースターを見上げ、昨日の事を思い返した。



◇◆◇



それは昨夜、テレビでカップル特集なるものを何気無く見ていた時のこと。

京介はまだ帰寮しておらず、圭志はいつも通り京介の部屋のソファーで寛いでいた。

街頭でリポーターがカップルを捕まえて様々な質問をする。

その中で初デートは何処でしたか?、とかそんな内容をやっていた。

「初デートか、そういや俺等デートっていうデートまだしてねぇな」

学園内では常に一緒にいるせいか、そんなことをしなくても不満はなかったし、態々外へ出る必要もなかった。そもそもデートという言葉事態忘れていた。

「いや、待てよ。その前に休みの日は毎日京介にヤられてるから俺にそんな事考える余裕がねぇんだ」

これは、たまには健全な付き合いも必要だろ。

それに、そこらのカップルの様に普通にデートするのもいいかも知れない。

そこで圭志は帰ってきた京介に明日は外へ行かないか?と聞いた。

「いいけど何か買い物か?」

「違う。俺等まだデートらしいものしてないだろ。だからデートしねぇ?」

「いいぜ。せっかくの圭志からの誘いだしな」

「じゃ、ちょうど明日オープンする遊園地があるみたいだからそこ行ってみねぇ?」

とか、なんとか普通に言った気がする。



◇◆◇



その時の俺は少なからずテレビの影響を受けていた、と圭志は思う。

「それでまず何処行くんだ?」

そう聞いた京介に、圭志はまぁ、いいやと考えるのを止めて楽しむことにした。

「最初はやっぱジェットコースターだろ?」

「お前絶叫系好きなのか?」

「まぁ割りと好きだな。京介は?」

「嫌いじゃねぇ」

それじゃ行くか、と二人はジェットコースターのある方面に歩き出した。

オープン初日ということもあり乗るまでに少し時間がかかった。

「すげぇ久しぶりだなジェットコースターとか」

順番になり、座席に腰を下ろすと安全バーが下げられる。

隣でそう呟いた圭志に京介は今更ながら、何で遊園地なんだ?と聞いた。

それに圭志は一瞬どう返そうか焦ったが、ここは無難に当たり障りの無いことを返しておくことにする。

「デートの定番だろ」

この俺がまさかテレビの影響を受けたなんて恥ずかしくて言えねぇ、と圭志は思った。

が、ガコン、とジェットコースターがレールの上を動き始め、コースを回り終わる頃にはそんな事どうでもよくなるくらいに圭志は楽しんでいた。

「次、何処行く?」

「そうだな、アレなんかどうだ?」

京介の指差した先には外観からして恐怖を煽る、廃病院をモチーフにしたお化け屋敷があった。

「あ〜、まぁ…。いいんじゃね?」

急にトーンダウンした圭志に京介はフッと笑う。

「怖いのか?」

今までの経験からそれが圭志の強がりだと知っている京介はわざそう言って挑発してみせた。

「そんなわけねぇだろ。行くぞ」

そして、圭志は案の定引っ掛かった。

(この俺に隠し事できると思うなよ?)

先を歩き始めた圭志の背を見つめ、京介は不敵に笑った。

人気がないのか、怖すぎて人が寄ってこないのか今度は並ばずにすんだお化け屋敷。

その真っ暗といっていい程の闇の中、京介は圭志を壁に押し付け互いの吐息がかかる距離で口を開いた。

「圭志、俺に嘘は通じねぇって分かってるよな?」

「………」

「何で遊園地なんだ?」

圭志が積極的に誘ってきたことも、その場所が遊園地だということも普段の圭志を見ている限り不思議でならない。と、京介は思っていた。

「……それは」

やっぱり気づかれたか、と思う気持ち半分、恥ずかしさ半分で視線をさ迷わせた圭志は、京介の背後、数メートル先の暗闇にぼんやりとした光が動くのを目に止めてギクリと肩を震わせた。

もちろん至近距離にいた京介が気づかない筈もなく、後ろを振り返る。

その先には、俯いた格好で車椅子を押す看護婦らしき女性がいた。

キィキィ耳障りな音を立てて近づいてくる。

京介は邪魔が入ったな、と舌打ちしたい気分だったが、圭志はそうではなかった。

「京介」

そう呼ぶ声が少し弱々しい。

そして、決定的な事が起こった。

二人の目の前で止まった看護婦の、紅い口紅を塗った唇がニタリ、と歪な笑みを浮かべた瞬間圭志は目の前の身体に抱きついていた。



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